地の利を活かして挑戦し続ける小さな蔵「成政酒造」

2022.12.5
「成政酒造」の取締役 山田雅人さん

南砺市と金沢市にまたがる医王山(いおうぜん)の峰々。その麓にある酒蔵「成政酒造」で今年の酒造りが始まったとお聞きし、見学に伺いました。

成政酒造では、10月から酒造りが始まり、2月まで約5ヶ月間続けられます。酒造りがスタートする時期は、酒蔵の周りにある田んぼと深く関係しているとのこと。

「うちで使っている酒米の約8割は、南砺市産で、そのほとんどが目の前の田んぼで作られているんですよ」と教えてくれたのは、取締役の山田雅人さん。
酒蔵の周りにある田んぼで作られている早生(わせ)品種の酒米、雄山錦・五百万石などの収穫時期は9月。収穫→乾燥→精米の過程を経て、10月初旬には酒米が酒蔵に届きます。日本酒の主原料である「米」と「水」は地元の、しかも酒蔵の目の前の環境から享受しているもの。

水は、酒蔵から500mほど山を上った場所にある湧き水を使用。400年以上前から滾々(こんこん)と湧き出る水は、戦国時代の武将・佐々成政が槍を突き湧き出したという伝説が残されている「槍の先の水」。超軟水のこの湧き水を使用することで、口当たりがよく、喉になめらかなお酒へと仕上がります。

酒蔵の周辺に広がる収穫を終えた田んぼ

明治27年の創業から約130年間、この地で歴史をつむいできた成政酒造は、現在、2人の蔵人によって酒造りを行っています。

「小さな蔵だからこそ、一つ一つの工程にひたむきに向き合って酒造りをしています」という山田さん。成政酒造では、現在、1週間に1本のタンクのお酒を仕込んでいます。大きな酒蔵さんだと、2日に1本、または1日1本のタンクを仕込み製造を行っているところもあるそうです。ですが、酒蔵の規模からそのペースを成り立たたせることは難しく、規模に合った製造に取り組まれています。出来上がる製造量は限られてしまいますが、余裕をもって工程を進められることで、一番大事な「麹づくり」をより丁寧に行うことができるといいます。

山の湧水の水質が超軟水であることは、口当たりの良いお酒に仕上がるという利点がある一方、発酵が弱いという特徴があるとのこと。発酵がうまく進むかは、米の水分量や洗米、蒸し具合によって変わってくるため、とてもデリケートな工程で、特に麹を育てる際は赤ちゃんを育てるように目を配るといいます。

麹を育てる「棚」という部屋は33〜35℃に保たれ、豪雪の冬場、極寒の外と棚の中を何度も行き来する作業を2時間おきに、2日間繰り返します。麹づくりは「酒の味を決める」大事な工程であり、発酵が弱い水の特徴からも息を呑む作業が続きますが、小さい蔵だからこそ、麹づくりに手間をかけて真摯に向き合われています。

「赤ちゃんを育てるように手をかけて」と、麹づくりの説明をしてくれる山田さん

小さな規模の酒蔵であることを活かした特徴がもう一つあります。

それは、「成政トラスト吟醸の会」というファンクラブのような制度です。先にお金を投資してリターンをもらう、今で言う「クラウドファンディング」と同様の仕組み。地元の有志によって35年前に発足し、現在の会員数は300人くらい。発足当時、吟醸酒が世の中に出始めた時代で、「成政酒造でも吟醸酒を作ってくれないか?」という地元の方の申し出をきっかけに始まったといいます。吟醸酒は、精米歩合が低く、低温で長い発酵時間をかけて造らなければいけないため、大変コストがかかり、販売価格が跳ね上がります。小規模で運営していた成政酒造さんにはリスクの高い挑戦でした。そんななか有志の方が「私たちが1タンク買い取るから、作ってみて!」と声を上げられたそうです。

現在も続く、いわば成政酒造ファンクラブの会。会員用だけに数量限定の新しいお酒を毎年造っているそうです。会の発足の原点は「他では味わえない、世の中にないお酒を飲みたい」というもの。だからこそ、ファンの声にこたえながら、毎年新たな酒造りに挑戦している、と山田さんは言います。

成政さんのお酒の特徴や、美味しい飲み方は? とお聞きしたところ、
「成政のお酒を通して、富山を、そしてこの医王山の里山の環境を感じてくれたら嬉しいです」と、思いを語ってくださった山田さん。
「この土地の食文化に寄り添って酒造りをおこなってきたことが、約130年続く成政の酒の特徴と考えています」 
ちょうど今造っているお酒は「鱈(たら)の子付け」という郷土料理に合う味をイメージされているそう。それぞれのお酒の蔵出しシーズンに食べる旬の食材をイメージしていつも酒造りをされているといいます。

南砺の逸品で取り扱っている「山廃仕込 純米吟醸」は、さわやかな酸味が特徴で、この酸味が「かぶら寿し」にとても合うとのこと。また、「純米酒」は常温やちょっと人肌に温めるとキレが良くなるので、こちらもお酒のあてに「かぶら寿し」がお薦め。

「ちょっとお酒を飲み、かぶら寿しを食べて、またお酒を飲んで。日本酒好きの方なら止まりませんね」と、笑顔で話される山田さん。

山廃仕込 純米吟醸や純米酒にオススメの肴「かぶら寿し」

もうすぐやってくる南砺の雪シーズン、「今年はこのセットで冬を楽しみたい」と膝を打ちました。皆さんにもぜひ、成政酒造のお酒を南砺の郷土料理とセットで味わっていただきたいです。

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【成政酒造 ㈱】
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