南砺の冬のおくりもの

「富山干柿」が出来るまで ~ 愛情と手間暇かけた農の手しごと~

2020.12.27
富山干柿に使われる「三社柿」の収穫風景

稲刈りの季節が終わると、明るい橙色の果実が、少し寂し気な南砺の里山の風景に彩りを添えはじめます。橙色の果実は、南砺市の名産「干柿」に使われる渋柿です。干柿の一大産地である福光・城端地区には広大な柿畑が広がり、晩秋の頃、色づいた柿の木の風景が美しいこのあたりをドライブするのが大好きです。

医王山(標高939m)のふもとに広がる福光・城端地区では古くから農家の冬仕事として干柿づくりが行われてきました。そのゆえんは、江戸時代に加賀三代藩主 前田利常がこのあたりに鷹狩りに訪れた時に、干柿を食べたところ、あまりにも美味しかったので、地域の干柿づくりを奨励したことがきっかけと言い伝えられています。

「富山干柿」として全国的にも知られている干柿は、この地で作られる干柿のことです。全国で4番目の出荷量を誇る富山干柿は、年間約300万個が生産され、全国へ出荷されます。

県外のファンも多い干柿の大きな特徴は、まずその大きさ!
「三社柿」という1個300g前後の大粒の渋柿が使われています。三社柿は南砺の原産種で、特徴的な粘土質の土壌を有するこのエリアでしか育たない渋柿といいます。また、医王山から吹き降ろす「医王おろし」という西風が、独特の甘みを育むともいわれ、実がほど良く絞まった絶妙な食感と甘味はこの土地でしか培われない独特な風味なのです。

そんな「富山干柿」はどのように作られているのでしょうか。

         ***   ***   ***   ***

《富山干柿 収穫から干柿になるまで》
1.収穫
10月末頃から色づいた渋柿の収穫が始まります。
2.皮むき
収穫された渋柿は機械を使い一つ一つ丁寧に皮をむきます。
3.糸つなぎ
2個を1個にして糸でつなぎ、竹竿にかけます。
4.乾燥
天日や乾燥機、練炭を使い、数回の工程を重ね乾燥させ渋みを抜いていきます。

干柿を乾燥させる工程で欠かせない作業が「手もみ」です。柿の水分や糖分を全体にいき渡らせるために一つ一つ手で「手もみ」作業をします。

下の写真は今回、取材させてもらった生産者の辻さんの手。
「強く押したらあかん。こうやって、うまくなーれって、愛情をこめて優しくさすってあげるんやちゃ」 と教えてくれました。一つ一つ丁寧に、お母さんたちの愛情のこもった「ひと手間」が加わることで、おいしい干柿になるんだなと実感しました。

愛情をこめて優しく「手もみ」をする生産者さん

各農家で1カ月ほどかけて丁寧に作られた干柿は、生産者さんたち自身で運営している「富山干柿出荷組合連合会」に納品され、パッケージ加工されてから「富山干柿」として全国に出荷されます。

《富山干柿 干柿が出荷されるまで》
1.検品
農家さんから次々に納品される干柿。注意深く大きさや品質を検品します。
2.商品の仕分け
大きさや色づきにより商品価値が変わるため、カテゴリー別に仕分けされます。
3.干柿を個包装し箱詰め
おいしさを保持するために納品後すぐに個包装し、箱詰めしていきます。最盛期は地元の人たち総出で加工作業が行われます。

12月半ば、加工作業で大忙しの工場を取材させてくださった富山干柿出荷組合連合会の会長 北島さん、理事 畑さんが、これからの組合の新しい将来展望をお話ししてくれました。

「産地を守らないと」、力強い口調で話を切り出した畑さん。
前述のとおり富山干柿は全国で4番目の出荷量を誇る需要がある一方で、生産者さんは現在170軒。高齢化、後継者不足で農地を手放す農家さんが増え、毎年約10軒ずつ生産者数は減少しているといいます。


「古いモノだけでは相手にしてもらえないから、伝統を守りつつ新しいチャレンジをしています」と言いながら北島さんと畑さんが、来年3月完成予定の新工場の完成予想図を見せてくれました。


福光・城端地区では、干柿の生産シーズンに先立って、「あんぽ柿(水分を35%程度まで残した柔らかくジューシーな干柿)」を生産しています。新工場では「あんぽ柿」に特化して、高齢化・後継者不足に悩む農家の栽培から請負い、加工、出荷、販売する新しい取組みが行われます。しかも、アジアや中東など海外への輸出を大きく視野に入れているとのこと。

新しい試みへの膨大な業務をこなすのは本当に大変なご様子ですが、活き活きした表情でお話をしてくださったお二人。「地域の次世代のために」という熱い想いを活力に、約400年続いている富山干柿は、さらに未来に向けて前進している様子が伺えた取材となりました。

富山干柿出荷組合連合会の会長 北島さん(右)と理事 畑さん(左)

☆☆ 富山干柿の食べ方アレンジ ☆☆
そのまま食べて美味しい富山干柿! ちょっと趣向を変えてアレンジを加えたレシピをご紹介します。

* 一口サイズに切った干柿にクリームチーズを添えて(お好みでオリーブオイルも) ワインに合います!
*大根なますにアレンジ。千切りした干柿を和えます(干柿の自然の甘さで砂糖は少なめに)
*小さくカットした干柿をグリーンサラダやポテトサラダに加えて
*ヨーグルトと一緒に食べても美味しいです

◆富山干柿の商品はコチラ


◇南砺の逸品 『ギフトボックス』にもセレクトされています↓
大切な人への贈り物にいかがですか?
「旬の味を楽しむ。冬の贈りものセット」(販売期間11~1月/数量限定)