8月末、夏の終りの時季、南砺市の秘境の地ともいわれる利賀(とが)地区を訪れました。日頃暮らしている井波のまちから車で45分、標高700mほどの利賀に降り立つと頬をそよぐ風が、より涼やかに感じられます。地区の9割が森林を占める自然豊かなこの土地で、南砺の逸品の「清流素麺」が作られています。
清流素麺の製造工場である「めんめん館」を訪れると、素麺を乾燥させる「ハタ干し」の作業を見せてくださいました。
細く長い素麺が部屋一面に干されている様子は圧巻です。
均一に伸ばされた素麺はとても美しく、まるで白絹の糸繰りを見ているようでした。
素麺の一本一本を丁寧に確認している職人さん。ハタ干しされている素麺はそんな職人さんの背丈を超えるほどの長さです。
「これだと長すぎて食べにくいので、半分(1mくらい)に切って製品化するんです」と、教えてくれたのはグループリーダーの畑井さん。
8つの工程を経てようやくこの「ハタ干し」をするそうで、今日は早朝5時からスタートし、作業は丸一日かかります。
「ここで半乾きに乾燥させ、少し熟成させたら、次の工程に進みます」
この「半乾き」というのがポイントのようで、次の作業部屋に行くとその理由が紐解けました。
次の工程は素麺の「整形」です。
器械ではなく女性たちの手作業により行われています。パッケージに入った清流素麺は、きれいに折り畳まれています。この独特の「手まり型」に整形するには、完全乾燥だと折れてしまうので、半乾きの状態でないといけないのです。
クルックルッと手首を上手に回転させ、手際よく素麺が折り畳まれていきます。「作業を見ていると簡単そうに見えますが、実は難しいんですよ」と、畑井さん。ここで作業されているのは、長年、素麺作りに携わってこられた熟練の技をもった地元のお母さんたち。躊躇のない素早い手わざにすっかり見とれてしまいます。
利賀の「手延べ素麺」は約40年前から製造が始まりました。山間にある利賀地区は、富山県でも有数の豪雪地帯。昼夜の寒暖の差、冬の寒冷な気候が、手延べ素麺作りにとても適していたことがきっかけだったそうです。そしてもう一つ素麺作りに欠かせない条件が、利賀の山村を流れる清流「百瀬川」の水です。現在も、百瀬川の水が使用され素麺が製造されています。気温と湿度、そして利賀の美味しい水、この3つの条件が先人の編み出した清流素麺の美味しさの秘訣なんですね。
村の森林組合によって運営されていた素麺作りですが、作り手の高齢化、引退という苦難に直面し、令和元年に現在の㈱グラスキューブが経営を引き継ぐことに。
ガラス加工メーカーである同社は、メーカーとして培った製造管理のノウハウと近代的な設備を導入していきました。素麺作りに欠かせない条件、気温・湿度も器械でうまく管理することで、受け継がれた素麺の味を安定して提供することができるようになったといいます。
「それでもやはり、人の手がうまさの決め手です」と畑井さん。
昔から手延べ清流素麺を製造している職人はそのまま引き継いで、素麺の品質が伝承されています。
和気あいあいとスタッフの皆さんの笑顔が飛び交う、清流素麺の製造現場では、ベテランの職人さんたちに混じって若い女性や男性も働いていました。利賀での素麺づくりの課題である、後継者問題を解決しようと、同社はベトナム人のスタッフを雇用し次世代の育成にも力を注いでいます。今だけでなく、未来にも目を向けた取り組み。変わらない利賀の清流素麺の味はこれからも守られていくんだなぁと、嬉しくなりました。
☆☆「清流素麺」お薦めの食べ方☆☆
滑らかな喉ごしと、麺のコシの強さが特徴的な「清流素麺」は、冷麺として食べるだけでなく、温かい「にゅうめん」にしてもオススメです。美味しいにゅうめんのレシピを聞いてきました。
●香り野菜のにゅうめん
[材料(2人分)]
清流素麺2束
生姜 10g
にんじん 20g
みょうが 16g
三つ葉 16g
さつまあげ 20g
ゆで卵 1個
水 60cc
粉末うどんスープの素 6g
[作り方]
① 生姜、にんじん、みょうがは細かい千切りにし、5分ほど水にさらす。三つ葉は3cmの長さに切る。
② 鍋に湯を沸かし、2,3等分に割った素麺を1分間ゆでる(硬め1分/柔らかめ2分)
③ 素麺をザルにあげて、流水でよく揉んで洗い、水気を切る。
④ 鍋に水を入れ沸騰したら中火にし、スープの素を入れる。次にさつま揚げ(半分に切る)、素麺の順に入れて1〜2分間煮る。
⑤ そうめん、さつま揚げ、汁と共に器に盛る。①の野菜とゆで卵を添えて、できあがり。
※簡単に作れる時短レシピです!レシピの具材以外にも、少し残った冷蔵庫の食材をちょっとずつトッピングしてアレンジしてもいいですね。
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